北陸の冬は雨と雪ばっかりじゃ。週間予報を見ると1週間晴れ間なしなんてこともざらです。寒くて天気の悪いこの時期に、オーバーホールをしている方は多いのではないでしょうか?私も年末からクロスバイクとロードバイクを完バラシしてオーバーホールしてました。そのオーバーホールついでにフレームをガラスコーティングしてやりました。クロスバイクで練習してロードバイクで本番と2度施工したので、その工程を記しておきましょう。
ガラスコーティングとは?
そもそもガラスコーティングとは?車を所有している方なら聞いたことがあるのではないでしょうか。車の表面を硬いガラス質の被膜で覆って傷や汚れをつきにくくしてやるサービスがありますよね。
しかしガラス質ってなんぞや?ガラスって高温でドロドロに溶かさないでも加工できるのか?調べてみましたが完全に化学のお話に突入しますので私にはさっぱりわかりませんでした。ケイ素化合物?世の中仕組みもわからず使っている便利なものはたくさんあります。ここはあっさりあきらめて便利さだけ享受いたしましょう。
詳しく知りたい方はこちらのサイトを見てみるとよろしいです。コーティングのはなし。ガラスコーティング剤は物によって特性も様々で、ひとくくりにはできないとっても奥深い世界です。
まぁつまりは傷と汚れがつきにくくてさらにはそれが数年間持続する、とっても素敵な加工です。車の施工例を見てみると艶々で見た目的にもかなりよさげです。オーバーホールでフレーム単体になっているこの機会に、私の自転車にも施工してやりましょう。自分でね。
まずはコーティング剤の選定です。ネット上をさまよい調べてみましたが値段はピンキリです。中華製の1,000円にも満たないものから1万円程のものまで多数あり。30㎖程度の小さな小瓶1つで1万は出せんよ。それにフレームにだけ塗るんですから余っちゃうしね。かといって安っすい中華製にお高いフレームをゆだねるのはさすがに怖すぎます。
私が選んだのがこちらのコーティング剤です。選んだ理由ですが怪しい中華製を除いて最安クラスだっただけです。高いものにはそれなりの理由があるんでしょうが、とりあえずガラスコーティングがどんなものか試してみたいだけなのよね。自動車用なので自転車に使うのは当然自己責任で。
洗車
それでは作業に入りますが、いきなりフレームにコーティング剤を塗っていいわけではありません。丁寧に下処理をしていきましょう。
まずは洗車。洗車してフレーム表面の汚れをしっかりと落とします。
チェーンステー裏。これは洗車後ですが全然落ちてない。チェーンからの油汚れなんですが通常の洗車では落ちないし、油汚れを落とすシリコンリムーバーを使っても無理でした。むしろ油分が抜けていてカリカリに固まってますね。細かい傷にも入り込んでいる状態です。でも次の工程で落とせるので進んでしまいましょう。ついでにフレームの輝きが小傷でちょっとくすんでいるのも見ておいてください。
磨き
お次はフレーム磨きです。研磨剤を使ってフレームをツルツルのテカテカに磨き上げていきます。汚れや油分が完全に落とせているのならば磨きをしなくてもコーティングはできますが、磨きをした方が仕上がりの艶が違ってきますのでこれはやるべきでしょう。
用意したのはこちらのコンパウンドと百均で調達したファイバークロス。3種類の粗さのコンパウンドがセットになっているので、粗いやつから順番に磨いていけばツルツルのテカテカです。
百均ファイバークロスにコンパウンドをつけて、あまり力を入れ過ぎずに磨いていきます。研磨という作業は表面を削る行為ですから、やりすぎると表面のクリア塗装を突き破って塗装面も削ってしまう可能性がありますが、このコンパウンドならそれほど粗くないのですし手磨きなのでやりすぎることはないでしょう。その前に疲れてやめてしまうと思うよ。深めの傷はあきらめて洗車などの拭き傷を消すぐらいにしておきましょう。
コンパウンドを変えるときはフレームに残ったコンパウンドをキッチリと拭き取ってから、新しいファイバークロスを使って磨き始めます。前の粗いコンパウンドでできた傷が消えるまで地道に磨いていきます。非常に細かくて見えにくい傷なので光に反射させながら確かめるといいですよ。コンパウンド別にクロスを用意するのは絶対です。粗いのと細かいコンパウンドがごちゃ混ぜになるといつまでたっても傷が消えませんからね。
洗車で落ちなかった汚れもこの工程であっさりと落ちます。傷に入り込んだ汚れもコンパウンドがかき出してくれます。
これはダウンチューブ裏でフロントタイヤから飛んできた異物で一番傷がつく場所でしたが、粗いコンパウンドから順番に磨いてやればこの通りテッカテカです。
磨きが終わったら最後にあらためて洗車です。フレームに残ったコンパウンドの油分と研磨剤を洗い流してしまいます。油分がフレームに残っていると次の工程でコーティング剤が定着しないのでこれは重要です。私は余計なものが入ってなさげな食器用洗剤で洗い完全に乾かしました。まぁシリコンリムーバーでもいいんじゃなかろうか。(クロスバイクの方はシリコンリムーバーで済ましました)
たぶん磨きだけで5時間くらいかかったんじゃなかろうか?結構大変な作業よ。
コーティング
研磨作業で力尽きたので翌日。
まずはコーティング剤をしみ込ませてフレームに塗りつける作業道具を作ります。百均で調達したワックスを塗る用のスポンジ。これでは大きすぎるので指でつまめる程度のサイズにカットします。さらにスポンジ部分がコーティング剤を吸い過ぎるので、スポンジを0.5㎝程度になるようにカットします。右下のやつが完成形。
今はコーティング剤を買うとスポンジとクロスが付属してくるようですが、私が買った時は付いてなかったのよ。
さらに下準備。コーティング剤をフレームに塗ったら硬化するまで触れてはいけませんし、濡れるのも厳禁です。なのでフレームに触れずに塗れてそのまま放置できる環境づくりです。
私の部屋には都合よく洗濯物を干すポールが天井からぶら下がっているので、ボトムブラケットにひもを通してぶら下げました。フォークは段ボール箱に穴を開けて逆さにぶっ挿します。不安定で倒れやすいので中にダンベルを仕込んであります。
これで準備万端!さぁ塗るぞ!!
スポンジにコーティング剤をしみ込ませてフレームに塗っていけばいいんですが、失敗しないようにコツを伝授いたしましょう。
まずコーティング剤をスポンジにしみ込ませますが、本当にごく少量で十分です。
フレームに塗りつけていきますが、コーティング剤は水のようにサラサラなので少量でも非常に伸びがいいです。この時コーティング剤が塗れている部分はスポンジがスルスル動きますが、まだ塗れていない部分は少し引っ掛かるような感触があります。ぱっと見塗れている部分と塗れていない部分の見分けがつきにくいのでこの感覚を参考に、隅っこから塗り残しのないようにしましょう。塗り進めていくとスポンジのコーティング剤が不足してきて引っ掛かる感触になりますが、スポンジにコーティング剤をつぎ足すのはまだ早い。塗り始めた場所から再度塗り伸ばしていくとまだまだ伸びます。コーティング剤をケチってるってわけではなく、理由は次の工程です。
せっかく塗ったコーティング剤ですがファイバークロスで時間をおかずに拭き取ってしまいます。それも全部拭き取ってるんじゃないかってくらいしっかりと拭き取ります。なので厚く塗っても無駄。むしろしっかりと拭き取るのが大変になるだけです。
ちなみにこちらは練習台となったクロスバイクでの拭き残しです。最初で加減が分からずスポンジから滴るほどコーティング剤をつけて、フレームに塗ったあげくの拭き残しです。このまま固まってます。これほどではなくても拭き取りが甘い所は光の反射が曇ったような状態になったりしてます。
それとホコリにも要注意です。拭き取り時に異物が表面についていないかもチェックです。スポンジが細かくちぎれてフレーム上に残っていることがあったので、放っておくと一緒に固まりますよ。
コーティングのコツは薄く塗り伸ばしてしっかりと拭き取りです!
しっかり拭き取るにはクロスを複数枚用意しておくべきかと。拭き取りに使ったクロスは乾くとカペカペしてくるので、オイルの拭き取りなんかに使ってやってください。スポンジは使い捨て。
このコーティング剤は1度の施工で3年、2度の施工で5年間コーティングが持続するそうな(自動車)。重ね塗りをするときは2時間以上乾燥させるようにとの説明書。私は1日に1度づつの施工で計3回塗ってしまいました。2回で十分だと思いますし、そんなに塗って意味あるのか?とは思いますが結構な量余るんですよね。たぶん長期保存しておいたら固まっちゃうんじゃないかと思うので無理やり使いました。自転車ならひと瓶で10回は塗れると思います。自動車に塗って残りで自転車にがベストな使い方かな。
追記:余ったコーティング剤ですが1年ぐらいで瓶の中に細かい結晶ができてきてますね。やっぱり半年以内には使い切った方がよさそうです。
施工後は完全硬化まで4~5日ほどかかります。その間は触っちゃダメよ。なので私は洗濯物を干す場所がしばらくフレームに占拠されました。
効果のほどは?
結局フレームを1週間ほど乾燥させてしっかりコーティングを硬化。仕上がりはどのようになったかというと、
どうじゃい?テッカテカのヌラヌラじゃろい!これがコーティングの力じゃーい!っと言いたいところなのですがコンパウンドで磨いた時点でこれくらいの輝きを放っていたので、これがコーティングの力だとは言いきれない。ただ私のフレームはトップチューブの上面のみマット仕上げなのですが、そこは極微妙ながら艶がでてました。マット仕上げに塗ってもテッカテカになるわけではないですよ。
それともう一つ。以前にロードバイクで千里浜を走りに行った時に、シューズにたっぷり砂が付いた状態でシートチューブにこすってしまってガッツリと傷が入っていたのですが、それが少し目立たなくなりました。
こちらはコーティング前のコンパウンドで磨いた状態。表面のクリヤー層が傷ついて白くなり深い所は塗装面までいっちゃってます。
こちらはコーティング後ですが、クリヤー層の白くなってしまった部分が少し目立たなくなりました。傷にコーティング剤が入り込んで凹凸を埋めてくれたからですね。深い傷は無理ですが水で濡らしたら目立たなくなるくらいの浅い傷なら隠してくれますね。
オーバーホールの動作確認も兼ねてお外で撥水テストです。ドリンクボトルから水をブシュッと噴射。
見事に水が玉のようにはじかれてますね。
ツルツルと水がフレームを流れ落ちていきます。フレームに残った水玉も走り出すと風と振動でふり落とされて、気がつけばフレームはドライな状態に。撥水っぷりは文句なしです。これなら汚れも落としやすそうです。
耐久性のお話
このコーティング剤は1度の施工で3年、2度の施工で5年間コーティングが持続するとうたっておりますが、それはきっと自動車でのテスト条件下のお話で自転車とはかなり状況が変わってくるかと思います。自転車ではタイヤから跳ね上げられた異物がコーティングを施したフレームに直接飛んでくることになります。ご自分のフレームを見てみるとわかると思いますが、フォークの又部分、ダウンチューブ裏、シートチューブのリヤタイヤ側などは特に異物で傷がついて輝きが失われているかと思います。
ここでちょっとコーティングの硬度のお話を。コーテイング剤をいろいろ探していた時に9Hという言葉がちょくちょく出てきました。これは鉛筆の芯の硬さ。2BとかHBとかのあれです。どうやら鉛筆を塗膜に一定の条件で押し付けて塗膜硬度を測定する方法あるそうで、7Hで引っかいたら傷がついて6Hで傷がつかなかったらその塗膜は6Hの硬度があるといった具合です。9Hをアピールしているコーテイング剤は硬化するとそれだけの硬度がありますよってことですね。(JIS規格では鉛筆硬度9Hが最高硬度らしいので実際は9H以上の硬度があるのかもしれない)ちなみに私が今回施工したコーテイング剤は硬度は明示されておりませんでした。
では9Hって実際どうなのよ?鉛筆の硬さで言われてもピンとこないので国民誰もが知っているモース硬度で比較してみましょう。ダイヤモンドが最高の10、サファイアが9、トパーズが8、カッターの刃が5.5、一般的なガラスで5、10円硬貨で3.5、人間の爪で2.5とかです。鉛筆硬度9Hはモース硬度では5くらいだそうでこれよりも低い硬度のものでこすっても傷が入りにくいはずですが、世の中モース硬度5以上の物はいくらでもあります。モース硬度7の石英なんて砂の中にいっぱい含まれてますし、路上にはそんな類のものは無数にあると思います。
そうなるとタイヤから異物が飛んできやすい部分のコーティングには傷が入りますし、さらに塗って拭き取る施工方法から考えるとコーティングの厚みは極薄です。うーん...私の予想では半年もすればダウンチューブ、シートチューブ、ボトムブラケットあたりのコーティングは剥げてしまっているんじゃないだろうかね?剥げてしまわなくてもコーティング表面に傷が入れば撥水や防汚性にも影響してきそうです。この辺りは使用しながら追記していきたいと思います。
最後に耐薬性です。自転車ではメンテナンス時にディグリーザーやらオイルやらを使いますから、それに対する耐性も実験してみました。プラスチックの板にコーテイングを施して硬化させた後に、速乾性パーツクリーナー、シンナー、シリコーンリムーバー、チェーンクリーナー(アルカリ性)、水置換オイルスプレー、チェーンオイルを垂らしてみました。結果、速乾性パーツクリーナーのみコーティングが溶けてしまいました。直でパーツクリーナーをフレームにかけることなんてしませんが(塗装がやられます)、フレームの近くで作業する時には要注意ですね。追加:時間はかかりましたがシンナーもダメでした。私が今回施工したコーティング剤ではこのような結果が出ましたが、他のコーティング剤では研磨剤を使わないと落とせないと表記されているものも見受けられましたので、これはそれぞれで試してみないとわからないですね。
自転車には必要か?
結構な時間をかけて自分で自転車のフレームにガラスコーティングを施したわけなんですが、コーティングのことを調べるほどに自転車に必要か?っと疑問に思えてきました。フレームを研磨してコーティングを施せば新車の輝きがよみがえってくるのは間違いないし、撥水と防汚効果も期待できます。でもそれが長期間持続するのを期待してしまうと...
どのような結果になるかは今後乗り込んでみて報告していきたいと思います。
その後
洗車時の汚れの落ちが良くなりましたね。特にチェーンから飛び散った油汚れの落ちは格段に良くなりました。今までは落としきれなかった黒く変色した油汚れがカピカピになって固着してしまっていたんですが、チェーンディグリーザーを指につけて軽くなぞってやるだけで、きれいに落ちるようになりましたよ。
耐久性についてはまた後日に。